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第1ラウンド:手と目

時計技師にとって最も重要なものが、「手」と「目」だと言われます。
1/100mmという非常に細かい世界でそれを見、作業を進める上で無くてはならないものだからです。
そしてそれらは日々その単位を扱うことでのみ自らのものにできるもので、一朝一夕にはいきません。
「腕のいい技術者」と言われている人は、手が「決まっている」人であり、直すものが「見えている」目をもった人たちのことなのです。

私がヒコ・みづのジュエリーカレッジに通っている頃、時計技術の基本は「ヤスリがけ」だと言われましたが、それは手が決まっていることを指しているのです。
そして先ず習ったことがヤスリがけでした。

始めにやったことが、ドライバー先端の作り直し(買ったままでは使い物にならない)で、「ドライバーの太さに対し、削る面 の長さが約2倍、削る面は平らで両方の長さが均等に、先端は中心にくるように」(図1)削り、焼入れと焼き戻し、サンドペーパーで磨いて最後に砥石で整えるというものでした。

当初はこれがなかなかうまく行かず、一日が終わる頃にはヤスリを持っていた手指が痺れて痛いほどでした。
そしてこの作業の中で「面を出す」ことが手を決め、見える――まともなドライバーを仕上げられるようになるのは、半年程後――ことにつながるのです。
そして次にピンセットの先端を整え他に必要な工具を作り、いよいよ時計を触れる段階になったのです。

第1ラウンド終了/To be continued
 

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